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Geo Story _ Fukushima Hibara  

Geo Story  

福島の里山を愛する料理人 黒澤俊光さんに聞く
「 福島檜原 深山の魅力 」

Fukushima Hinohara Deep Mountain Attraction
with Toshimitsu Kurosawa, chef 
 

 

「じゅんさい摘みは裏磐梯の夏の風物詩」

1888年に磐梯山が噴火し川が堰き止められ大小300以上の湖沼群が出来ました。年月が経ちじゅんさいが自生し裏磐梯のいたるところで見る事が出来ます。
昭和に入り裏磐梯の土地が国から払い下げとなり開拓にいろんなところからやってきました。うちの祖父母もそうやって荒れたジャングルのような場所を耕し田んぼと畑を造り現在に至る訳です。早めに入った黒澤家は今のじゅんさい沼の辺りに“ほったて小屋”を建て裏山で“炭焼き”、そして椎茸、なめこ栽培をして生計を立てていたようです。夏になれば“女性達”は小舟に乗り、じゅんさいを摘んで現金収入にしてました。比較的高価なじゅんさいは地域に住む者達にとってとても有難い産業だったようです。昭和40年頃から「じゅんさい摘みは裏磐梯の夏の風物詩」と言われるようになりましたが、現在摘む人の高齢化により出荷しているのはうちともう一軒だけになってしまいました。

「プルン」「シャキ」「サク」の食感

2011年震災後、“おらが村復興プロジェクト”を立ち上げ5つの柱を作り、地域の宿泊業の方々と村に掛け合い持ち出しで様々な企画をやってきた中の一つが“じゅんさい”の復活でした。2014年村から3年100万円の予算を頂き「じゅんさい復活協議会」を発足し地元の大工さんに舟を10艘作ってもらい、裏磐梯エコツーリズム協会で摘み取り体験等を行い、県内外のメディアに取り上げて頂き現在「夏の風物詩」がまた復活しつつあります。
裏磐梯のじゅんさいの特徴はなんといっても葉っぱの周りのゼラチン質の多さ、そして香りが強く食感が“シャキシャキ”とするところです。うちのじゅんさいはその中でも別物と言っていいほどゼラチン質が多く、全国の有名店に少量(摘む時間がなくて・・)ですがお使い頂いております。
今回は生産者ならでは「生じゅんさい」と会津伝統野菜の余蒔きゅうり、鰻の「うざく」を合わせてみました。上に徳島県神山町佐々木さんちのすだちのポン酢をゼリーにして「プルン」「シャキ」「サク」の食感が面白い一品となりました。上には野の花を添えてお出ししてます。
時には同じ場所の檜原在来種蕎麦の上に贅沢にたっぷりかけてお出ししています。

「明日蕎麦だ!!」と喜んだ思い出

1940年開拓で入った祖父母が田んぼより先に作ったのが蕎麦でした。 
標高900m朝晩と昼の寒暖差が10℃以上ある厳しい地域ならでは、良質の蕎麦が採れます。特徴は小粒ですがしっかりと身が入り、香りと粘りが強いのでとても“コシ”も強くのど越しも最高の蕎麦に仕上がります。
毎年7月20日頃に種を蒔き9月の彼岸に刈り取り、1週間天日で干して水分量15%ほどで低温庫で保管します。
その後石臼の回転スピードを下げ蕎麦粉に熱が入らないようにすることによって香り良い蕎麦になります。
昔からの蕎麦の食べ方は「大根蕎麦」といい、短冊に切った大根を炒めそこへ山鳥を入れ水を入れて炊いた後は生醬油。
温かいかけそばです。蕎麦をこねて打つのはじいちゃんの仕事 こねる事をこちらでは「でっちる」と言います。
切るのはばあちゃんで、ちゃんと役割分担が出来てます。子供の頃、前日から石臼で粉を挽いているので、「明日蕎麦だ!!」と喜んだ思い出があります。
蕎麦打ちででた端の部分はもったいない無いので捨てずにだんごにして、中にあんこを入れ“水餃子”のようにして作ったのが、「やせうま」というお菓子です。指の跡が痩せた馬のあばらのようだからそうです。
ゆでたてはツルンとしていて、更に焼いて焼いて食べるとまわりはカリっと中はモッチリ!素朴でいて懐かしいおやつです。

 
 

福島から未来へ

最後に、多くの皆様がご存じのとおり、震災後に直接被害とさらに大きな風評被害が福島を襲いました。
須賀川の80才の生産者が原発が飛んだ時「福島とおら家の畑はもう終わった・・」と言って自らの命を絶ちました。
無農薬 有機栽培でやってきた農家さんでした。震災で多くの犠牲者が出た中で残った命だったのに、なぜ80才のおじいちゃんが亡くならなければならなかったのか? 激しい怒りと絶望感があったのを覚えてます。
県民の多くがそうだったと思います。それから人が変わったように今まで以上に「県内産」にこだわり、それを広める活動をしてきました。
気付いたのはここ10年で県内の食材クオリティが大幅に上がった事です。生産者の方々も誇りをもって出荷されている事に僕自身も元気とやる気をいただいてます。そして、福島以外の方々が福島、会津を好きになってくださって応援して下さることは我々この場所に生きるものとして、本当に有難く感謝そ気持ちで一杯です。ありがとうございます。

沼尻高原ロッジ
 料理人
 黒 澤 俊 光
 
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